研究内容
低濃度PCB(ポリ塩化ビフェニル)で汚染された絶縁油からPCBを分離濃縮する技術の早期実用化を目指して、大阪大学大学院工学研究科、大阪大学環境安全研究管理センター、(株)ネオスが平成22年7月1日付けで「ネオス(分離濃縮システム)共同研究講座」を開設しました。
残留性有機汚染物質であるPCBで汚染された絶縁油は現在未処理のまま日本各地で大量に保管されており(合計50万トン以上と見積もられています)、現行の化学処理法だけでは処理に膨大な時間とエネルギーを要することが問題となっています。さらに保管容器の劣化・腐食や自然災害による環境中へのPCBの漏洩が懸念されており、早急にPCB汚染絶縁油を全廃できる処理技術の確立が求められています。
本学工学研究科の明石 満教授、木田敏之准教授は、(株)ネオスと共同で、絶縁油中のPCBを高選択的に吸着除去できる環状オリゴ糖誘導体を開発しました。さらに、ここで吸着されたPCBは有機溶媒で洗浄するだけで収率良く回収でき、環状オリゴ糖誘導体も再利用できることがわかりました。本共同研究講座では、この環状オリゴ糖誘導体をPCB吸着材としてカラム内に充填し、その中をPCBが混入した絶縁油が通過するシステム(別添図)を組むことで絶縁油中からPCBを分離・濃縮できる試験機を構築し、環境省の認可を取得する為の実証試験研究に集中的に取り組むことで、本試験機の早期実用化を推進することを目的としております。本試験機を用いることで、PCB汚染絶縁油を容易に無害化絶縁油と少量のPCB高濃縮液に分離することができ、無害化絶縁油は再利用し、一方、少量のPCB高濃縮液は既存のPCB処理施設で容易に分解処理することが可能となるため、我が国で大量に保管されているPCB汚染油の全廃に大きく貢献できると考えられます。
図.汚染油からPCBを分離濃縮する技術の模式図
シクロデキストリン (CD) の化学構造と模式図